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報告 大人のための100選 講演会   2022/11/22

大人のための100選講演会を開催しました(報告)

2022年11月19日(土)米子市立図書館文化講演会「大人のための100選 ボルヘス、マルケス ラテンアメリカ文学を読む」を開催し、35名の方にご参加いただきました。

「大人ための100選」とは米子市立図書館が平成29年より図書100冊を厳選し開設したコーナーです。コーナー開設と同時に作成した推薦図書リストと紹介文は図書館ホームページでも公開しています。

この度の講演会では昨年に引き続き100冊の選書を担当された元米子市立図書館司書の大野秀さんを講師に迎え、「大人のための100選」から『アレフ』J.L.ボルヘス著、『ペドロ・パラモ』フアン・ルルフォ著、『百年の孤独』G.ガルシア=マルケス著の3冊を取り上げラテンアメリカ文学について語っていただきました。

はじめに大野さんはラテンアメリカ文学について、ラテンアメリカ圏(メキシコ、西インド諸島以南のアメリカ大陸)で書かれた作品、および出身者の文学で、スペイン語で書かれている作品であること。おもに20世紀後半、ラテンアメリカ文学の特徴とされるマジックリアリズムの傾向によって世界的に注目されること。マジックリアリズム小説とは現実と非現実が融合したような作品に対して使われる芸術表現技法であることなど、独立時代のラテンアメリカ地図を示しながらラテンアメリカ文学が植民地化や革命、独立など激動の時代を乗り越えた歴史を背景にその独自性を築くに至り、世界的なブームを巻き起こしていくことを初めてラテンアメリカ文学に触れる方にも伝わるように基本的な情報を交え語られました。

次にラテンアメリカ文学の世界的ブームの起こりについてアルゼンチンの都市化、スペイン内戦による南米への知識人の亡命、バルセロナ出版界の後押し、キューバ革命の影響などを絡め分かりやすく解説してくださいました。

ラテンアメリカ人作家たちはヨーロッパやアメリカの作家の影響を受け、その作風や技術を取り入れ、その後作家同士がそれぞれ影響を及ぼしあい個性的で独特な作品が数多く生まれ、世界中で認識されるようになったこと。またラテンアメリカ諸国の政治的混乱、軍事または独裁政権下にいた作家たちにとって、その情勢は作品世界にも大きな影響を及ぼし、亡命作家も生んだこと。そのような混乱の時代の中でもユーモアを忘れず、異文化、異民族の混在という混血文化を背景にした作品内容がラテンアメリカ文学の特徴でもあり、そこから誕生した大型長篇や短篇群は1980年代に日本でもブームとなったことを語られました。

最後に今回の講演会のテーマであるラテンアメリカ文学作品の著者、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、フアン・ルルフォ、ガルシア=マルケスについてその著書、人となりについて解説いただきました。

ボルヘスは教養ある中流階級の家庭に生まれ父は弁護士で英語教師。父方の祖母はイングランド人。1914年一家でジュネーブに移住し長い詩作の時期を経て1930年から短編を書くようになりました。その後、ブエノスアイレス市立図書館の司書であったこと、政権交代を機にアルゼンチン国立図書館の館長に任命され翌年にはブエノスアイレス大学の英米文学教授にも就任したことなどを語られました。

一方、フアン・ルルフォはメキシコ革命の余波を受けた厳しい少年時代を過ごします。著作は父と息子を題材にしたものが多く『燃える平原』は17の短編を集めた作品でメキシコの1920年代の動乱を背景とした物語です。『ペドロ・パラモ』は死の街を主人公が訪れ、異なる時空、交じり合う生死といった独特な世界観の中で父の存在を探す旅を描いた作品であることを解説していただきました。

マルケスはアラカタカ生まれで幼少期は祖父母の元に預けられ大きな影響を受けます。10代からの多読、17歳のカフカ体験を経てフアン・ルルフォ著の『ペドロ・パラモ』を読んで衝撃を受け、その後『100年の孤独』の爆発的成功につながりました。

大野さんの豊富な知識と丁寧な解説を聞きながら各作品だけでなく、その作者の人となり、そして人生にも触れることで紹介された著書がより魅力的になり読んでみたいと思える講演会となりました。

質疑応答では来場者の皆様から多くの質問、感想があがり大盛況のなか閉会となりました。

大野さん、ご来場いただきました皆様、誠にありがとうございました。