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いわむらかずお講演会 報告   2021/07/04

いわむらかずお講演会 絵本づくり50年~絵本が生まれるとき~を開催しました。【報告】

6月13日(日)米子市立図書館および、長年に渡り読み聞かせ活動を続けてこられた絵本の会ほしのぎんかとの共催講演会を開催しました。開会に先立ち、図書館より矢木館長、絵本の会ほしのぎんかより渡邊代表の挨拶、そして絵本の会ほしのぎんか内田さんによる、いわむらかずお先生著作の『りんごがひとつ』の読み聞かせを行いました。

「いわむらかずお絵本の丘美術館」からのリモートによる講演会は、遠くからほととぎすの鳴く声、子どもたちの遊ぶ声などが聞こえつつ、自然豊かな雑木林や農場が広がる空気感漂う素敵な講演会でした。

いわむらかずお先生の講演の内容

1970(昭和45)年、絵本作家としてのいわむら先生のデビュー作は『ぷくぷくのえほん』。

未熟ではあるが魅力のある作品であると、ご自身の初期作品について愛情を込めて振りかえられながらお話が始まりました。

いわむら先生は、1939(昭和14)年、東京にお生まれになり、当時は、田んぼや雑木林など自然に囲まれた土地だったそうです。しかし時代は、日本が中国に攻め入り、またアメリカの真珠湾攻撃を強行。太平洋戦争へと突入して行きました。戦火を逃れるために、いわむら先生はご両親と離れ、秋田の祖父母のもとへ集団疎開。東京の住宅一帯は焼け野原と化し、暗く寂しく厳しい戦時中の幼少時代を過ごされました。

いわむら先生の作品世界の温かい眼差し、みずみずしい生命力は、こうした幼少期の原風景と、戦時中の暗くて寂しい時代が背景となっていたようです。

絵本作家になりたいと思ったきっかけは、欧米の素晴らしい作品例えば、レオ・レオニ作『ひとあしひとあし』やマーク・シーモント絵『はなをくんくん』など、絵がドラマを作っていく翻訳絵本に惹かれて絵本作家になりたいと思われたそうです。

1975(昭和50)年、いわむら先生は、東京芸大時代のご友人の紹介で、東京から、栃木県益子町へ、ご夫婦、ご家族ご一緒に移り住まれます。

雑木林の広がる、原風景を発見できる新しい移住先で、5人の子どもさんにも恵まれ、豊かな自然の中での体験を通じて、

1978(昭和53)年『タンタンのずぼん』(「タンタンシリーズ」)、1983(昭和58)年『14ひきのひっこし』(「14ひきシリーズ」)、1982(昭和57)年『よるのともだち』(「こりすのシリーズ」)、1985(昭和60)年『ひとりぼっちのさいしゅうれっしゃ』、1990(平成2)年『チャボ物語』、1991(平成3)年『風の草原』(「トガリ山のぼうけんシリーズ」)、1996(平成8)年『かんがえるかえるくん』(「かんがえるかえるくんシリーズ」)など数多くの絵本が生まれることとなりました。

1998(平成10)年、今から23年前に、栃木県馬頭町、現在の那珂川町に絵本と自然がともにある子ども美術館「いわむらかずお絵本の丘美術館」を設立されました。

代表作のひとつであるいわむら先生の「14ひきシリーズ」は、10ひきのねずみの子どもたちがそれぞれ個性を持っていること、『14ひきのこもりうた』に出てくるねむの木は「絵本の丘美術館」の庭にあるねむの木で、寺島尚彦さんが曲を付けてくださったということ、「14ひきシリーズ」の試作として服を着せていない描写の野ねずみの絵を見せていただい

たりと大変興味深いお話も聴くことができました。

いわむら先生の一貫して続けてこられた、体験して描くこと、そして自然や子どもたち、人々とのつながりなど、いわむら先生の歩みや熱い思いを拝聴することができました。参加した60名の皆さんとともに、充実した時間を過ごすことができました。いわむらかずお先生、「絵本の丘美術館」の皆さま大変ありがとうございました。