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報告 米子市立図書館30周年記念講演会   2020/09/29

松本薫さん講演会開催しました(報告)

米子市立図書館は今年で開館30周年となります。これを記念し、9月26日(土)、米子市立図書館多目的研修室で「米子市立図書館30周年記念講演会」を開催しました。

「小説とふるさと 日野三部作を終えて」と題し、郷土の作家松本薫さんをお招きし、講演していただきました。

松本薫さんは『TATARA』『天の蛍』『日南X』と、鳥取県日野郡にまつわる三部作を書いておられます。

講演の前に、なんと松本薫さんご自身が語られる『天の蛍』講談が披露されました!講談の中では松本薫さんが作詞された「天の蛍」の歌と映像も流されました。力強い講談と美しい曲を聴きながら、戦国時代の江尾に思いを馳せました。

天の蛍映像youtubeより

講演は、司会との対談形式で行われ、日野三部作が出来るまでの貴重なお話を聞くことができました。

『天の蛍』では、戦国時代に10代の主人公がどのような生業で生きていけるのかを考えたこと、プロットは最初に5~6割くらい作るが、全部は作らず、登場人物たちに動いてもらい、ラストが決まったことなどを語られました。また、戦国時代という激しい時代は、尼子と毛利のように、弱いものは強いものについていかなければ生き残れない世界だったが、それは450年たった現代とあまり変わりはないことなどを語られました。江美城主・蜂塚右衛門は強い毛利にはつかず、尼子として戦ったその決断についても触れられ、『陰徳太平記』など郷土資料を参考にされたことを語られました。

『TATARA』は、奥日野のたたら製鉄がかつてはおよそ2万人のくらしを支えた産業であったこと、明治という時代を舞台にしたのは、たたら製鉄が近代化を支え、戦争にも加担した光と影が浮き上がる時代であったことを語られました。

また、長い期間続けられたたたら産業は、日野川や弓ヶ浜など、山陰の山や地形をつくり上げたこと、削った山は棚田となり、米どころは鉄産業と深いかかわりがあり、風土に大きな影響を与えたことを語られました。

日野から多くの文化や文学者が当時生まれたこと、『TATARA』でモデルとなった近藤家のお金によって文化が入り、日野川を下って文化がおりてきたことなど、とても興味深い時代背景を聞くことができました。

『日南X』では、当初は日野三部作というシリーズ刊行をする予定ではなかったこと、いつかミステリーを書いてみたかったこと、松本清張へのオマージュとして、清張が書けなかった日南町のミステリーを書いてみようと思った執筆の動機を語られました。

また、『日南X』では『天の蛍』など、過去に亡くなってしまった登場人物の名前を一字変えて、生き返らせたことなど、著者の登場人物への愛が伝わってきて、とても嬉しく感動しました。

日南町は松本薫さんにとって驚きの町であり、大好きな町であること、執筆中は実際に日南町に住まわれたことなど、制作秘話をたくさん聞くことができました。

松本さんにとってふるさとは足場であり、どこまで行っても、やがて帰ってくる場所であること、自分をつくってきたものがふるさとであることを語られました。松本さんが描く物語の主人公は外から舞台である日野にやってきます。主人公が外からやって来ることで、ご自身のふるさととの距離を図っていることなど、松本さんのとても貴重な創作方法・創作の原点をお聞きすることができました。

最後に、中央集権国家の時代から、地方から発展する時代がやってくることを示唆され、ふるさとと自身の関係をもう一度見つめ直すことの必要性を説かれ、講演は終了しました。素晴らしい講談と講演、誠にありがとうございました。

この度の講演会は、新型コロナウィルス感染症感染拡大予防のため、予約制の定員40名で開催いたしました。多くの方にお問い合わせいただきました。もっと多くの方に聴いていただきたかったのですが、皆様のご希望に添えず、大変申し訳ございませんでした。図書館カウンターで、講演会当日のレジュメを配布しております。ご希望の方は、お申し出ください。

松本薫さん、ご来場の皆様、お問合せいただきました皆様、誠にありがとうございました。