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お知らせ

伯耆文化研究会 報告   2026/05/20

令和8年度伯耆文化研究会の総会と記念講演会を行いました(5月16日)

今年は、総会が先に実施されました。昨年度事業と決算報告、今年度事業計画と予算について承認され、そのあと、記念講演に移りました。

記念講演の講師は、知の地域づくり研究室、NPO法人・本の学校顧問の永井伸和氏です。演題は「知の地域づくりを求めて『山の陰の民の小さな物語』―図書館・書店・地方出版」で、鳥取県で育まれた本による地域文化づくりを振り返る内容でした。鳥取県は長らく「図書館後進県」と呼ばれましたが、その再生を支えたのは行政だけではなく、市民や出版人、書店人、文化活動に関わる多様な人々でした。

1970年代以降、麦垣文庫や今井ギャラリー、「すきですYONAGOかわら版」などの活動が地域文化の土壌をつくり、市民同士を結びつけました。1987年開催の「本の国体」では、市民が模擬図書館を創り上げ、図書館を単なる本の貸出施設ではなく、人々が集い、学び、表現する文化空間として示しました。この流れは1995年の「本の学校」設立、さらに2002年の国民文化祭とっとりへと発展していきます。

背景には、明治期から出版と教育を重視してきた今井書店の歴史がありました。創業者今井兼文は「社会を治す医者に」と出版事業を営み、その精神は戦後も受け継がれました。ドイツの書籍学校視察を経て設立された「本の学校」は、地域における知の拠点づくりを目指しました。

2000年代以降は、鳥取県立図書館の「鳥取モデル」の確立や学校図書館整備が進み、全国や海外との交流も広がりました。現在は認定NPO法人「本の学校」が、人と本、人と地域を結ぶ活動を続けています。

図書館は多様な価値観との出会いを保障する「知のセーフティーネット」であり、民主主義や地域自治を支える存在です。宇沢弘文や水木しげるなどを育んだ土壌を大切にしながら、「知的無医村」を生まない地域づくりの重要性が強調されました。