9月10日(土)、米子市立図書館の多目的研修室において、伯耆文化研究会の9月例会が開催されました。本会の二人の理事による発表でした。
最初に中島佑輔さん(広島大学大学院博士課程)より「大山のナラ枯れが語るもの」と題して次のとおり講演がありました。
(1)通称「ナラ枯れ」は、鳥取県東部地域を中心に、平成22年度に被害のピークに達し、その後減少した。しかし令和2年度、大山周辺で再び被害が拡大し、問題となった。
(2)大山の「ナラ枯れ」に対するさまざまな言説や実践について、フィールドワークを行った。その結果大きく分けて、自然の現象と見るか、社会的な現象と捉えるかで、2つのアプローチがあると思われる。
①自然的な現象と見る・・・「ナラ枯れ」を自然の変化と見る。「ナラ枯れ」によって利益を得ている生物もいるので、人間からは介入すべきではない。
②社会的現象と捉える・・・山の利用低下により、伐採されなくなった木が「ナラ枯れ」となっていると考える立場。人間からの介入は可能であるとする。
(3)また①・②とは別の立場として、大山を「大山さん」という特別な存在として考える人々がいる。さまざまな立場からいろいろなアプローチがあることを理解し、その上で、大山とともに生きていくために大切なことは何なのか、一緒に考えて行きたい。と結ばれました。「ナラ枯れ」をどのように捉えて行くのか、地域で皆と共に考えて行くべき難しい問題だと感じました。
続いて、鷲見寛幸さん(大山町教育長)より「米子城跡の自然」と題して次のとおり講演がありました。
(1)トウカイタンポポ・・・東海地方を中心に分布する。鳥取県では米子城跡にしかない。伊予大洲でも見られる。加藤貞泰(美濃黒野→米子→伊予大洲と国替え)によって持ち込まれたものではないか。
(2)米子城跡森林の特色・・・①スダジイを優先する照葉樹林である。②草原の状態から、極相林に近いものまで、多様な林相を見ることが出来る。③絶滅危惧種であるキンラン等貴重な植物が存在する。④シダ植物の宝庫である。
(3)現在米子城の石垣が話題となっているが、植生も一度破壊すれば、二度と元に戻すことの出来ない大切なものである。石垣と植生が共存できることを願ってやまない。と結ばれました。私達には、米子城は石垣と植生を共に守り、後世に伝えていく義務があると感じました。